ハンセン病を生きて―きみたちに伝えたいこと―を読んで(1)

ハンセン病を生きて―きみたちに伝えたいこと―を読んで 
 

 わたしは昨年に科学の森で59期生の生命論の発表を聞くまで、正直ハンセン病という病気を知りませんでした。どんな症状かはもちろん、この病気の患者さんたちが歩んできた壮絶な人生もその時初めて知り、驚いたのと同時に日本でこんなことが行われていたのだと考えるとゾッとしました。それに付け加え、この「ハンセン病を生きて」を読んでみて、ハンセン病の患者であった伊波敏男さんの生の声を知れて、今までよりハンセン病やその患者さんたちについての知識が深まったように思います。

 ハンセン病の患者さんたちはどんなに日本の法律が良い方向に変わっても、法律上は自由を獲得していましたが、周りからの「偏見」に阻まれて普通の生活を送るのは困難なのだと知りました。この人たちが本当の自由を得て、満足に生活できるようになるためには、私たちが変わっていかなければならないと思いました。

 しかし、これはとても難しいことであると思います。人は、周りの人と「違う」ということをすごく気にします。調和性を求める日本ならなおさらでしょう。私自身もそうです。人と違う意見を持ち、それを誰かにストレートに伝えることを怖いと感じてしまいます。外見もそうです。太れば痩せなきゃいけない、と必死にダイエットしたりと、容姿が不細工であればそれを普通の状態に近づけようとしたり、その容姿を見て陰口をたたいたりします。ハンセン病の症状であればなおさら偏見をもたれ、患者さんは傷つくことになるでしょう。また、そこに「ハンセン病は感染しやすい」など間違った知識も付け加われば偏見はさらに大きくなってしまいます。やはりこの問題は法律を変えるだけではなく、私たちの病気への認識、また根本から意識を変えていく必要があると感じます。

 その点で、T小学校の5年4組の話はとても心に残りました。

伊波さんも最初は小学5年生には理解できない話だろう、と期待していなかったものの、子どもたちは自分が知れる限りの情報で、しっかりと発表をしていました。その上、「人権」「差別」「偏見」などの言葉を使わず、自分たちの問題に置き換えて考えることもしていました。これは、考えすぎてしまう大人にはできないことだと思いました。その立場に立ったらどうなるか、または「いじめ」などで同じような立場にたって感じたことを生かし、問題と正面から向き合う。また、それを一生懸命考える我が子を見て、親も一緒に知識をふかめ意識を変えられる、素晴らしい活動だと思いました。

ハンセン病のように私たちの根本の意識のせいで改善できない問題は、大きいものから小さいものまでたくさんあります。この本にでてきた小学生のようにこれらを別々ととらえるのではなく、問題の大小に関係なく自分の意見を持ち、まわりの人に意見を共有し、また新しい考えを取り入れる、そのような場が今の私たちには必要なのではないでしょうか。