生命操作をめぐる諸問題 H30年8月27日

*授業の流れ
〔前半〕
はじめに:仏教の生命観
 私たち人と動物、植物との関わりはどのようなものなのか。生命操作に関する問題を紐解くヒントとして、「仏教の生命観」が挙げられた。
「全ての命がともに支えあい、つながりあって生きること」(仏教生命観と縁起思想より)
この地球は人だけはない、共存関係であることを再確認した。

1.キメラ・ハイブリッド
 キメラ・・・同一個体の中に他の遺伝子型の異なる組織が互いに接触して存在する状況。
 ハイブリッド・・・異なる種の生物の交配によって生まれた生物のこと。(雑種のこと)
 キメラ・ハイブリッドの技術は現在様々な研究に用いられている。たとえば、緑色蛍光タンパク質GFP)を利用し、目的の物質を追跡する技術は、キメラの一種である。オワンクラゲGFPをほかの遺伝子に組み込むからである。ハイブリッドの例として、ライガー(トラ×ライオン)や、ゾンキー(ゼブラ×ロバ)など18種類が現在存在する。研究段階の技術として、パーキンソン病およびアルツハイマーの治療や、血液凝固抑制剤の製造などがある。

2.遺伝子改造
 受精卵・胚への遺伝子操作により特定の表現型をもつ生物を作製。
 遺伝子操作によって様々な性質を付与させたり、抑制させたりできる。例では、長時間走り続けることができる「マラソンマウス」がある。また、研究段階のものでは、オキシトシンの働きを変えることにより、ライオンなどの猛獣をペット動物にできるかもと期待されている。

〔後半〕

3.異種移植
 異なる種の間での臓器・組織・細胞移植。
 1960年代からブタ・チンパンジーなどの臓器をヒトに移植することが行われ始めた。現在では、病原体や拒絶反応などの問題がわかっている。研究では、細胞のみを注入して神経を再生させたり、動物の細胞を使った人工臓器を作ったりする研究が進められている。

4.ゲノム編集
 DNA・遺伝子の切り貼りによる新生物作製。
 2013年に簡単に切り貼りする方法が開発されてから世界中で行われるようになった。現在利用されている技術として、筋肉量を2倍にすることでウシ・サカナなどの食べる量を増やしたり、植物の耐病性の向上などがある。

5.クローン個体
 体細胞核移植技術による同一DNA個体の作製。
 1996年、世界初のクローン実験はヒツジで行われ、生まれたクローンはドリーと名付けられた。その後、ウシ、ヤギ、ネコのクローン実験も成功されている。


感想
 人間がよりよい生活を起こるために現在では様々な分野の技術進歩が行われている。私たちはさまざまな恩恵を受け、昔よりも快適な暮らしを送っている。しかし、本当にそれがよいことなのだろうかということを今回問われた気がした
 今回学んだ生命操作は画期的な技術である。身体機能が向上したり、遺伝病の原因遺伝子を取り除くことによって発症しなくなったり、大切な人を蘇らすことだってできるかもしれない。現在ではあり得ないと思うような世界があっという間に訪れるかもしれない。
 だが、すんなりと実装されるわけではない。世界で使われるようになるためには様々な壁がある。その中で難しいものが倫理観である。倫理観は人それぞれ異なったものを持っており、国によってや、宗教によっても大きく異なる。この異なる倫理観をすべて満たすことは不可能である。技術の進歩はまずない。そのため、このラインまでは許可してもよいであろう話し合いが必要となってくる。現在の社会でも倫理審査という話し合いがもうけられている。「この技術は使ってもよい。」「いや、早すぎる。」なんて会議が研究チームとはまた別の専門家が話し合っている。
 今ある技術をあたり前に使っているものが、昔では物議を読んだ代物であることがある。それは今と20年前、30年前での「一般の倫理観」が少し異なるからだ。このように時代によって変わることがあるのが倫理観である。しかし、守られるべき領域も存在する。どこまで変わってもよいかよくないか。その境を見極めることがとても重要である。

 今の技術を当たり前に使うのではなく、一旦考えてから使うことをぜひおすすめしたい。

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