朝日新聞より moricyucyu

 夏休みはいかがですか? 新聞に気になる記事が出ていたので載せます。
乳児8人の延命中止 両親希望で「看取り医療」 大阪の病院 
2006.07.31 朝日新聞社 東京夕刊 14頁 2社会 (全1,230字) 
 終末期医療の先進的な取り組みで知られる淀川キリスト教病院大阪市東淀川区)が、昨年までの7年間に、重い病気で治る見込みがなく、死期が迫った8人の赤ちゃんへの延命治療を中止していたことを明らかにした。病院側は「子どもにとって最も望ましい医療のあり方を家族と医療従事者がともに話し合って決めた。一般的に言われる『延命の中止』ではなく、より人間らしい『看取(みと)り医療』と位置づけている」と説明している。
 石田武院長や船戸正久・小児科部長らが31日、会見して明らかにした。同病院では98年10月に、無脳症などの致死的奇形や末期の脳室内出血などを対象とする赤ちゃんの終末期医療に関する指針を作っている。
 指針策定後の99年から05年までの7年間に、同病院がこの指針に基づいて対応した事例を集計した。その結果、死亡した約70人の赤ちゃんのうち、すべての延命治療を中止したのは、重い脳室内出血などを起こした末期の超低体重児ら8人で、いずれも余命が数十分から1、2時間とされる時点で、両親の希望を受け、治療を中止したという。8人とも新生児集中治療室(NICU)で積極的治療を受けたが、複数の医師が回復が見込めないと判断した。
 船戸部長は「最期の看取りの場合、家族との時間を最大限大切にし、お母さんの胸の中で、家族に囲まれて安らかに亡くなるケースが多い」と話した。
 ほかに、苦痛の除去などを除く新たな治療を差し控え、家族との時間を尊重する「緩和的医療」の対象となった赤ちゃんは57人いた。
 赤ちゃんへの終末期医療は、本人の意思確認ができないために難しいという指摘がある一方、過剰な延命治療を見直す動きも広がりつつあり、02年の船戸部長らの調査によれば、新生児医療の拠点病院の85%が延命治療の中止や差し控えを経験しているという。
 ◇第三者が審議できるシステム必要
 額田勲・神戸生命倫理研究会代表の話 疾患ごとに特定の条件が詰められていれば許されると思う。ただ、日本では乳児や新生児の尊厳死安楽死の議論は緒についたばかりで、社会的コンセンサスは定着していない。どんな病気だったのか、本当に手を尽くしても助からなかったのかという点を社会に問うことが必要では。第三者が審議できるシステムが望ましい。
 ◆キーワード
 <赤ちゃんの延命治療> 一般的な延命治療中止の条件としては、(1)回復の見込みがない末期状態にある(2)患者の意思表示か家族による意思推定がある(3)治療が医学的に無意味と判断される--などの要件が知られている。赤ちゃんの場合は意思確認ができず、命にかかわる重い病気で生まれてくる赤ちゃんの治療のあり方が論議になっていた。
 厚生労働省の研究班が04年にまとめたガイドラインでは、父母が治療方針を決定する権利と義務を有するとし、(1)治療方針の決定は子どもの最善の利益に基づかねばならない(2)治療中止を検討する際は医師以外の医療スタッフも同席した上で父母の気持ちを確認する--などと定めている。