生命操作についてのグループ討論 5月31日 ぎんがめたりか(3B11)

生徒6人と実習生の方1人と時々先生も加わって、生命操作に関するいろいろなテーマについてグループ討論をしました。
テーマは    ・着床前診断と胚選別
        ・ドナー・ベビー
        ・人工子宮        です。交わされた意見を簡単にまとめてみます。

着床前診断と胚選別について
 現在すでに確立されている胚の遺伝子特性の診断技術を使って、各種疾患の因子を持たない健康な胚を選ぶことに関する討論です。
【肯定的な意見】
・親の希望があるならやってもよい。
・もし自分が遺伝性の病気を持っている親なら自分のような人がもう一人できるのはいやなので診断してもらう。(全員一致の意見)
【否定的な意見】
・親の気持ちとしてはよいとしても倫理的には別問題であり慎重に考えるべきだ。
・生まれてきた子供は、胚選別の結果生まれてきたと思うと複雑な気持ちがするのではないか。
・胚選別が社会標準になれば我々と価値観が変わるのではないか。
・所得差などの原因から、着床前診断が受けられる人とそうでない人で差ができ、階層社会化を進めてしまうのではないか。
・遺伝子診断が正確でなくて予想と異なる事態が起きた場合誰が責任を取るのか。
・胚選別は生まれてくる予定の命を殺すことになるのではないか。
【その他・疑問】
・医師はどのように関わればいいのだろう。
・国は何らかの方針を示すべきなのだろうか。

・ドナー・ベビーについて
 ある人の病気を治すためにもう一人子供(ドナー・ベビー)を作り、その子供の組織を利用することに関する討論です。
【肯定的な意見】
・子を最大限利用するという意味ではよい。
・治療される子が完全に治るなら産まれた子は役目を果たしたといえるのではないか。
・もし経済的余裕があるなら産まれる子供の苦痛は少ないのではないか。
   ⇔貧しい場合はどうか。苦しむのではないか。
【否定的な意見】
・そもそもこのような技術が悪い。
・「ドナー・ベビー」がいじめの対象にならないか。
【その他・疑問】
・「なぜ自分は生まれてきたのか。」という根源的なことを子供が考える時、目的が他者のためであったことを思うとどのように感じるのか。
・人の治療においてこのような(ドナー・ベビー、遺伝子診断等)選択肢は多いほうがいいか、少ないほうがいいか。
・社会的要素がからんでこないか。
   ⇒   親(私益)・・・個人の自由⇔社会的規律・・・国家(国益)  

・人工子宮について
 まだまだ実用化はされていませんが将来人工の子宮による出産が可能になるかもしれません。そのことに関する討論です。
【肯定的な意見】
・利便性を考えるならよい選択肢といえるかもしれない。
【否定的な意見】
・痛みを伴わない出産により子供への愛情が薄れないか。
・人間の「大量生産」により軍事産業への利用が懸念される。
・自分で産めるのに人工子宮に頼るのか。
   ⇔自分で産めない場合はどうか。便利な技術といえるか。
・女性の、出産という権利はどうなるのか。
・人工子宮と提供された卵・精子により親のない子供ができる。彼らを誰がかばうのか。
・「親と子」という言葉の認識を根本から変えるのではないか。
【その他・疑問】
・人間の大量生産をどう考えるか。
・出産・育児に関して社会的な保護・対応を考えるべきだ。
代理母と違う点はなんだろうか。

○個人的な意見○
 討論全体を通して、生命操作を行う側である医師・親の立場からの意見は比較的述べやすいのに対して操作をされる本人である子供側からの意見は考えにくかったように思います。生まれてくる子供の気持ちは彼らが生まれてくるまでわかりません。だからこそ慎重な議論が望まれます。今回の討論では特に人工子宮について社会への普及を不安に思う意見が多かったです。人工子宮はまさに親子に関係を現在とまったく異なるものにしてしまう可能性のある技術だからです。ひとたび技術の便利さに慣れてしまうと、私たちはもうそれを手放さなくなります。正しい認識なしに技術が濫用されるのを防ぐためにもこういった討論は重要だと思います。