JT生命誌研究館見学 (3C14)

●10/1に、高槻市にあるJT生命誌研究館に行き、館長の中村桂子先生に講義をして頂きました。内部の展示についても学芸員の方から様々な説明をして頂きました。


機中村先生のお話
(自分なりの要約&解釈なので、多少間違っている所があるかも知れません。訂正追加等あればお願いします)

・『科学技術』は、人間の利益や幸福を生み出すためのもので、一般に「科学」とみなされているものである。性質として、ものごとの答え(損なのか得なのか、有益なのか無駄なのかということ?)を求める。

・対して(実際の)『科学』とは、ものごとを考えることで自分の『世界観』を作ることを目的とする。

・現在の科学、および自分たちの世界観が形作られたのは17世紀以降、ガリレオガリレイやフランシス=ベーコン、ルネ=デカルトアイザックニュートンといった科学者達によって作られた『機械的世界観』である。これは、ものごとは数式や物質的法則によって普遍的に表すことが出来、またそれらを用いることであらゆるものごとは数学の答えを求めるように自動的に推定することが出来る、というものである。

・この世界観に基づいて、近現代の社会や文化のシステムは築かれてきたのだが、現在人間が直面している地球温暖化オゾン層破壊といった環境問題、そして精神疾患や自殺者の増加と言った人間の心の問題は、このような機械的世界観が、『生物的なもの』、つまり生態系や個々の生物のあり方を妨げるものとなっているところにその原因があるのかもしれない。現在、機械的世界観に代わる、あらたなものごとの考え方=世界観として、『生き物の世界観』というものがある。

・『生き物の世界観(生命的世界観?)』は、宇宙や地球、そして生命は全て循環的であり、多様であり、可塑(周囲の環境に合わせて姿を変えられるということ)である、ということを考える。

・機械は効率性、均一性を重視する。パソコンが一台ごとに異なった機能や性質を持っていては機械の意味がない。対して生命は、連続性、多様性を持ち合わせている。たとえば、生物の体内でエネルギーを生産したり物質を構成したりする代謝のメカニズムでは、ありとあらゆる物質は体内を循環して用いられ、その循環のプロセスには様々な種類の物質(酵素など)が働いている。

ショウジョウバエやマウス、そしてヒトに至るまで、発生の段階における体の部位を決定するDNAのシステムは全て共通していて、それはこれら全ての生物が、遥か昔に生まれた一つの生命からDNAを受け継いでいる、『多様でありながら共通である』ものであるということを示している。

・機械は一度壊れてしまったら、その壊れた部分のパーツを取り替えるなどして、何らかの手を加えなければ再び機能することは出来ない。だが生命には、その壊れた部分を別の部分で置き換えることによって、本来の機能を取り戻そうとする能力がある。




供Т枡盡学

一階では個々の展示の説明をして頂き、屋上のビオトープを見た後、各自で自由に館内を見て回りました。

2階の回廊では堤中納言物語の『蟲めづる姫君』を題材にした展示があって、千年以上前に日本人が持っていた、『生命的世界観』にも共通する生き物の考え方を垣間見ることが出来る興味深いものでした。

他にもDNAの構造や細胞の模型、様々な生物の成体や卵の標本など、沢山の展示があってとても面白かったです。生命誌の冊子やカードも頂きました。




掘Т響

中村先生のお話の内容は他にもたくさんあったのですが、メモを取るのを忘れてしまったので、自分の記憶の限りで書けるのはここまででした…
しかし、お話の中の『生き物の世界観』の大切さというのは、今までの生命論の授業で学んできたことに共通する重要なテーマだと思いました。

館内は落ち着いた雰囲気で、それぞれの展示をじっくり見ながら回ることが出来ました。入ってすぐの階段がDNAの二重らせんになっていたのにはとても驚きました。どの展示にも、言葉にしにくいのですが何か共通しているものがあって、あえて言うなら生命を『生命らしく』感じさせる展示だったと思います。それが中村先生の提案する『生命誌』の考え方なのかも知れません。

あと図書コーナーに好きな分野の本が沢山あって、どれを読もうか悩んでいるうちに時間が来てしまって悔しい思いをしました。また絶対に来ます(笑)