脳と生命 (3B35)

大阪大学の霜田求先生に「脳と生命」についての講義をしていただきました。

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脳神経学(ニューロサイエンス)の発達によって、人の心の活動(意識、感情、思考、意思、記憶、想像等)をより客観的な形で知る機会が増えてきました。それに伴って生じてきた様々な問題についての説明してもらいました。

供講義内容

(1)脳画像と心
脳治療のために種々の脳画像診断が用いられているなか、脳画像診断は医学的な診断にとどまらず、人の感情や思考といった「心の働き」についても多様な情報をもたらす。
例えば「地図を読む」「喜怒哀楽の感情を示す」「嘘をつく」といった心の活動、を画像化することも可能になってきている。つまり、人の心がよめるようになるかもしれない。
また、健康で発病していない人の脳から将来の発病を診断したり、「衝動的暴力性」「小児性愛指向」「反社会性人格障害」といった特異な行動性向を治療できるようになる可能性もでてくる。
その結果、人々は自分の「私」がいわば丸裸にされてしまうのではないかという不安・恐怖の念を抱くことになるかもしれない。

(2)脳への薬物による介入
精神疾患の治療目的で用いられる「向精神薬」を患者でない人がつかうことでハッピーな気持ちになったり、ADHD(注意欠陥多動性障害)の子供達に使われる薬によって健常の若者がテストの成績を上げるためや爽快感・多幸感を得るためなどの増強目的で、一部の国で広く用いられている。
昔からコカやアヘンを服用する習慣はあり、通常では嗜好品に分類されるコーヒー(カフェイン)、タバコ(ニコチン)、酒類(アルコール)による気分変調は日常にとけこんでいる。一方で、スポーツ競技者のドーピングは禁止されている。
線引きが難しい薬物の使用について、それぞれの使用の妥当性・条件(テスト時における薬物の使用はありか、なしか、など)を検討する必要がある。 

(3)脳と機械の融合
BMI(ブレイン・マシン・インターフェス)と総称される、コンピューター技術や機械工学技術と脳機能をつなぐことによるコミュニケーション機能・身体機能の拡張についての試みについて。
脊椎損傷や四肢麻痺による身体機能の不自由な人への援助として、脳とコンピューターを接続することで、思考・意思をデータ化する装置がよく知られ、
コンピューター処理された脳からの信号により制御される機械や機器、たとえば義手・義足、電導車いす、さらには自動車の研究開発もすすめられ、難聴や視力障害者、さらには外部への意識表示が困難な意識障害患者へのコミュニケーション手段の補助としての可能性も追究されている。
また、健常人の能率・効率アップのための研究を推進する人たちもいて、主な目的は軍事力である。戦場で戦う兵士たちの脳と作戦本部の中央制御室の大型コンピューターがつながることで、より効率的かつ的確な軍事活動の遂行が目指される。

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グループに分かれて次の3つについて討論しました。

1、脳画像っで「心を読む」ことにはどのような問題があるか。
2、「大学入学試験や医師・法曹家などの国家資格試験に際して、集中力や記憶力を高める認知増強薬物を服用する」ことの是非について考えてみよう。
3,BMIの増強的利用にはどのような問題があるか。

検感想
脳の研究がこんなに進んでいるとは知らなかったのですごく驚きました。治療目的での研究はどんどん進められるべきだと思うのですが、研究が進むにしたがって健常者も利用できる技術が開発されても、使って良いかどうかは別問題だと思います。人の心が読めるなどのプライバシーに関係するものや、ドーピングまがいのものなど、慎重に線引きして、混乱が起きないようにして欲しいと思いました。