10月7日の授業報告(JT生命誌研究館中村桂子先生)

今回は中村桂子先生のお話を聞きに高槻にあるJT生命誌研究館に行きました。
 
テーマ:生物多様性とは
 
0、はじめに
 
1011日から29日までCOP10として、生物の多様性を守ること一つの目的とした国際会議が愛知で開かれる。このように、生物の多様性は世界規模で注目され、話題になっている。
 
1、多様性の原点
 
多様性の原点は古代ギリシャにまでさかのぼり、その頃は、科学者と同義であった哲学者のアリストテレスに端を発する。彼は、物事を一つ一つ異なる多様なものとみていくべきだ、主張した。しかし、一方彼の師匠であるプラトンは、物事の共通部分が大事なのでそこを見ていくべきだ、と主張した。つまり簡単に表すと
プラトン……………共通性
アリストテレス……多様性
と主張したことになる。
しかし、ごく最近になるまでアリストテレスの考えよりもプラトンの考えが支持され、科学は専ら何事においても共通性を見出そうとしてきた。
 
2、生物多様性biodiversity)の始まり
 
そのような中で世界に先駆けて生物の多様性を実証したのが、テリー・アーウィンである。彼は、1979年にアマゾンで一種の木から昆虫を落とし調べた結果、既に知られている種はその中の約3%しかいなかったと報告している。それまでにアマゾンなどで調査が行われたことはなく、先進国で知られていた170万種をはるかに超える3000万種の昆虫がいると推測された。
 
3、生物多様性とは
 
しかし、生物多様性は何もこの世に存在する生物の種が多いことだけを表しているのではない。同じ種であっても、能力や見た目が異なるものがいてそれも多様である。更に、生態系の多様性、つまり様々な環境があることも生物多様性として考えられている。
また、先に述べた種の中での多様性は、生物多様性の中でも遺伝の多様性として考えられている。
 
4、人間と生物多様性
 
生物多様性について我々が考えるときに大事なのが、人間もその多様性の中に生きているということである。近現代において、人間は金融市場原理と科学を手にし、自然を破壊してきた。しかし、その自然の中には人間(ヒト)はもちろん含まれており、自分たちを自身で傷つけていることに他ならない。更に、外の自然を破壊することは人間の内なる自然、つまり身体や心(時間・関係)を壊すこととも同じである。
このように、人間が生物多様性の中にいること忘れると問題が生じることは必然なのだ。
 
5、生物多様性と共通性
 
ではなぜ、多様であるのに自然という大きな枠組みの中に人間は含まれるのか?
答えは当たり前のように感じるかもしれないが、ここで議論は原点に戻り、多様性と共通性を考えることとなる。
今まで述べたように、世界には本当に多様な生物がいる。しかし、元をたどればどの生物も38億年前に誕生した一つの生命体である。それぞれがそれぞれに異なった、特有の進化を遂げたのだ。その点においては、皆共通であり人間も自然に含まれると考える根本だろう。このように、多様であることと共通であること、一見矛盾する両方のことにに目を向けることがとても大切なのだ。
 
6、生物多様性のまとめ
 
  生物は本来多様なものである。
  私たち人間も多様な中で暮らす。
  多様ではあるあるが、生きている基本は同じである。
 
7、中村桂子先生の言葉
 
科学者というのは、話題になっていることや注目されていることだけを追いかけるのではない。そのことの根本にある基礎の基礎とどうつながっているか、同じところと違うところがあるがそれは何故か、とかんがえることが必要である。
 
8、感想
 
人間も自然のなかにいるという点において、他の生物と同じである。分かっているようで、
忘れてしまうこのことが本当に大事なのだと感じた。共通性と多様性があるということに興味がわき、これから生物について考えるとき今までとは違った見方ができると思う。
そして、根本にあることに目を向けること、色々な角度からものを見ることが問題解決には重要であるということも学んだ。
あと、生命誌研究館の見学も教科書にあるようなものを実際に見れたりしてとても楽しかった。