9月30日の授業報告(ⅢB 10)

今回は、淀川キリスト教病院ホスピスの緩和ケア認定看護師でおられる杉田智子先生にお越し頂きました。
 
テーマ:「いのちの限りと向き合う-ホスピスでの実践より-
 
0.日本における死亡に関する知識
・平成21年(2009年)の総死亡数は115万人である。
・出生数は107万人と総死亡数が出生数を上回っている。
・死亡順位
 1.悪性新生物 2.心疾患 3.脳血管疾患 4.肺炎 5.老衰 6.不慮の事故 7.自殺
・日本人の3人に1人が、ガンで死亡。
・ガンの生涯リスクは男性54%、女性41%で、日本人の2人に1人がガンになる。
 
1.緩和ケア
◆以前の定義(WHO 1989年)
 緩和ケアとは、治癒を目指した治療が有効でなくなった患者に対する積極的な全人的ケアである。痛みやその他の症状のコントロール、精神的、社会的、そして霊的問題の解決が最も重要な課題となる。緩和ケア目標は、患者とその家族にとってできる限り可能な最高のQOLを実現することである。末期だけでなく、もっと早い病気の患者に対しても治療と同時に適用すべき点がある。
◆改定後の定義(WHO 2002年)
 緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、疾患の早期より痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題に関して的確な評価を行ない、それが障害とならないように予防したり、対処することで、QOLを改善するアプローチである。
◆緩和ケアは、医療を充実させる大切な医療。苦痛が緩和されれば、穏やかな時間が取り戻せます。
遠慮せず、勇気を出して言ってみましょう。「緩和ケアを受けたいです」と。 オレンジバルーンプロジェクトより)
 
◆理念
ホスピスとは「親切であたたかくもてなすこと」を意味する。
・近代社会において、ホスピスは、自分の死に直面するという最も難しい旅において保護と安楽を提供する特別なケアの理念を意味する。
◆チームメンバー(淀川キリスト教病院ホスピスにおいて)
・専任スタッフ
 医師4名、看護師21名(患者と11での看護)、看護助手1名、電話相談員2名、病棟事務員1
・兼任スタッフ
 チャプレン(牧師)、医療ソーシャルワーカー理学療法士作業療法士言語療法士
地域看護専門看護師、皮膚・排泄ケア認定看護師、栄養士、薬剤師、訪問看護
・ボランティア
 ホスピスボランティア、アロマセラピスト、音楽療法士、歯科衛生士、グリーフカウンセラー
ホスピスケアの基盤となる考え方
・基本的ケアの徹底
・「その人らしい」最期を
・死の現実から目をそらさない
・真実への権利
・細やかな患者の理解
◆病いとしてのまなざし
・疾患(disease)は、医学の中で、症状・診断・診療という診断に基づく枠組が確立している。
・病い(illness)は、人間が病むという主観的な体験に焦点があてられている。
→“ガンを病む人”としてのまなざしが重要。
◆痛みは人を現在に閉じ込める
・患者は病いにより生ずる様々な痛みに囚われて、痛み以外のことに関心を注ぐことができない状態に追い込まれる。
・痛みは人を現在に閉じ込め、人は前にも後ろにも身動きのできない窮地に立たされる。
→痛みから解放されたとき、患者は心身の自由を取り戻し、本来その人の在り様に立つことができる。
◆あなたは、“あなたのまま”で
 あなたは、“あなたのまま”でたいせつです。
 あなたの人生の最後の瞬間までたいせつな人です。
 ですから、私たちはあなたが安らかに死を迎えられるだけでなく、
 最後まで生きられるように全力を尽くします。
  (ホスピスの母であるSaunders,D.C.の言葉)
 
■授業の感想
 ホスピス病棟で働く看護師さんたちは本当に大変なお仕事をされているのだと思った。
亡くなっていく患者さんを看取った後、すぐに気持ちを切り替えてまた次の患者さんの所へ行くことなど、我々にとっては真似できないようなことだし、ストレスなどもたくさんある中で、自分の心もケアしていかなければならない。これは、本当に大変な仕事だと思う。
授業中に見たDVDの中で、「患者は見捨てられてここに来たのではない。」という田村先生の言葉が強く印象に残っている。ホスピス病棟に来る患者さんたちは半ば人生を諦めかけているのにも関わらず、そこの看護師さん達は、少しも諦めていないという気持ちの強さに驚かされた。そういう希望を持った看護師さん達と、一緒に生活していると、患者さん達もまだまだ自分は生き抜けるんだという希望が湧いてくると思う。そういう気持ちの変化をさせてあげることは、やはり、経験を何度も積み重ねてきたプロにしかできない仕事だと思った。
今回の授業を通して、ホスピスについて詳しく学ぶことができた。機会があれば、実際にホスピス病棟に行って、病院の雰囲気や患者さんと看護師さんとの距離感などを肌で感じてみたいと思った。