ラットの解剖 B8

来てくださった方の説明を聞いてるときや、実際に解剖しているお手本を見ているときは、1ヶ月ちょっとお世話してきたラットをこんな風にするのかと思っていたが、終わってみれば結構最後までしっかり出来たなと思う。説明のスライドの写真は白黒であったが、ラットが妊娠していた場合の写真はとても鮮明に思えて、妊娠しているメスを殺したくないと感じた。沢山の胎児を今まで育てていた母親を殺すことは、とても残酷であった。解剖する前は、麻酔で眠らせてから、解剖をして殺すのかと思っていた。しかし、麻酔で殺した。いつもと違う異様な臭いから、これからの運命を感じとったのか、いつもケージからケージへと移すときは鳴かないラットたちが鳴き、逃げ回っていた。申し訳ないなと思いつつも、逃げようとするラットの尻尾をつかみ、麻酔薬が入っているビンにいれた。妊娠しているメスは、妊娠していないメスやオスに比べて、子孫を残さなければいけないので、なかなか意識を失わなかった。私がビンにいれたオスは、一二分で意識を失い、動かなくなった。少しの間だったが、ほぼ毎日お世話してきたラットがこんなにもあっという間に死んでしまうとは思っていなかったので、生への儚さを感じた。動かなくなったラットをビンから取りだした。いつもは、触ると暴れだすラットが全く動かず、死んでしまったことを実感した。そのラットの足を板にテープで固定した。手足を広げてみると、飼い始めたときよりも格段に大きくなったなと改めて感じた。ここからが、いよいよ解剖であり、とても緊張した。獣医の方が解剖を行っているときは、ラットを素早く切っていく姿に驚きのあまり気づかなかったが、皮膚を切っても人間と違い、全く血が出なかった。続いて、臓器を包んでる体の膜を切っても同じく血は出なかった。臓器は、隙間がないほどぎゅうぎゅうに入っていた。体の膜を切ったとき、私の場合は手際が悪かったためか臓器は動いていなかったが、見本ではまだ体の機能は働いており、腸がうにょうにょしていて、拍動は遅いがしっかりと心臓も動いていた。まだ意識がありそうなラットの心臓と繋がっている血管を切り、完全に殺した。心臓と繋がっている血管のため、一気に血が溢れ出した。この工程を行うがとても辛かった。その後、消化器官を膜と繋がっている血管を切りながら、皮膚と切り離していった。この際も、大量の血が出てくるので、拭き取りながら行った。臓器をシャーレに移し、腸と腸を繋いでいる膜を切っていき、消化器官が一直線になるようにした。人間の場合は、盲腸はほとんどなく退化しているが、ラットの場合はとても大きく、胃と同じぐらいの大きさであった。腸の長さは、ラットの体調の3倍ほどあり、とても長かった。腎臓は、本当に黒い豆のような形をしていた。気管は、掃除機のホースのようになっていて、でこぼこであった。体の臓器を取り出した後、首の部分を切断した。首の筋肉は、発達していて、なかなか切れなかった。首を切って、顔の皮膚を剥ぎ取り、頭蓋骨をペンチの様なもので、切っていき、スプーンみたいなので脳を掘り出した。脳は、余りシワがなく、匂いを感知する間脳がとても発達していた。ラットは色素が無いため、水晶体のような透明な目になっていた。妊娠していたメスから取り出した胎児を実体顕微鏡で観察すると、胎盤からへその緒が伸びていた。まだ胎児は小さかったが、顔の形は既に出来ており、ヒゲの毛根が観察出来た。解剖をし終わった後は、取り出した臓器を元に戻し、体を新聞に包んだ。新聞にラットを戻すとき、体が固くなっていて、テープを貼ったときの姿のままだった。尻尾も固くなっていて、柔らかくしなることはなかった。こうして文章にしてみると、残酷なことをしたなと感じるが、ラットから多くのことを学べたと思う。特に、生命の儚さを身を持って実感した。