恐怖・・・。 3C-10 poyo

いろいろあったので、どこから書き始めるか悩む。

ではまずマウスの飼育から。とりあえずかわいい。(いや、かわいかった。)指を近づけると鼻を近づけてきて、二本足でたった。かわいい。マウスに情が移ってはいけないとみんなゆうけど、無理な気がしていた。むしろ愛情をもってしまったものを自分で殺すという経験をしてみるのも大事かと思い、よくマウスと遊んでいた。

麻酔。このときが一番印象に残っている。クロロホルムのビンにマウスを入れようとすると、マウスはなんとか逃げようとして、うまく入れれなかった。だけどむりやり押し込んだ。・・・自分が嫌いになった。
麻酔が効いていく過程をはじめて目の当たりにして、なんともいいようのない重苦しい気分になる。さっきまで鼻のさきの毛が絶えず動いていたのに、もう止まってしまった。目は飛び出ている。

開腹。はさみで皮をきり、手でむりやり穴を広げる。思いっきり。 このあたりが一番罪悪感があり、まだ正常だったと思う。ここから後は、もうマウスがただのモノにしか見えなくなっていった。
腸は緑の管、肝臓はまさしくレバー。腎臓なんてサイズも色も小豆。好奇心にかりたてられるまま内臓をいじりたおした。
強烈な印象がのこっている。今スケッチを書けとゆわれても、どこに何があったかちゃんと書ける自信がある。きっとそこに解剖する意味があるのだろう。本で見て一生懸命覚えるよりも、解剖したらそのときの光景が鮮明に記憶される。また想像としていたものとはだいぶ違いがあるので、実際に見ることはすごく大事だ。僕の想像とちがったのは、腹膜をあけるとすぐに内臓がぎゅうぎゅうにおしこめられていたこと。想像ではもうちょっと内臓と内臓の間に隙間があって、そこに組織液があると思っていた。ほかには、肝臓が三枚あったこと、肺が左右に一個ずつじゃなかったこと、皮下脂肪の感触、子宮の形、などなど。

最初はすごく罪悪感があった。死んだマウスを触るのでさえ抵抗があった。だが解剖を進めるうちに、徐々に感覚が薄れていき、最後にはなにも感じなかった。首を切断したり、内臓をかき回したり、頭をぐちゃぐちゃにいじったり。まるでプラモデルを分解しているかのようにマウスの体を扱った。でもそこに最初の感覚はなかった。僕はなにより、そのことが恐ろしかった。マウスの目より、内臓なんかより、自分が変わっていってしまっていることに恐怖を覚えた。たしかに慣れるというのは必要なことかもしれない。まともな神経ではやっていけないのだろうと思う。けど何も感じなくなってしまってよいのだろうか?なにか大切なものを失ってしまってはいないだろうか? そのことをよく考えて、今のこの気持ちだけはなくさないようにしていきたい。