生命論第12回 3A28

今回は大阪市立大学大学院文学研究科 哲学教室の准教授でいらっしゃる土屋貴志先生に講義をしていただきました。
イレッサ薬害を中心に医薬品全般をめぐる問題点などのお話をしていただき、十分程度のビデオも観させていただきました。
 
医薬品をめぐる今日の問題
1 偽造薬 インターネットを通した平行輸入
2 開発データのねつ造(降圧剤ディオバン)
3 イレッサ薬害
 
これらの問題があるのに対して医薬品の研究、開発、審査、承認、宣伝、販売、処方はどうあるべきかという問題定義。最近は審査、承認がインターネット販売によりおろそかになっていたり、しっかり行ったとしてもドラッグラグが発生したりなど規制にも考慮が必要になっていきている。
 
効く薬と言うには?
プラセボ(偽薬)効果…薬の中に有効な物質が入っていなくても患者には有効物質が入っていると言ったまま処方すると病気が治ってしまうという効果。3割がこの効果によって治る。
つまり、3割が薬で治っても効くとは言えない。
また、薬が効くかどうかは処方されるその人次第であり、効く薬と言うには統計学的に判断するしかない。
 
不顕性感染…感染していても発症しないこと。
 
イレッサ薬害につて
 
イレッサ(一般名はゲフィチ二ブ)…イギリスのアストラゼネカ社が製造し、同社の日本法人が販売する肺がん用抗がん剤。「がん細胞だけを狙い撃つ『分子標的薬』だから副作用が少ない」と承認前から宣伝されたが、販売直後から多数の副作用死を出した。
 
厚生労働省が把握しているイレッサによる急性肺障害・間質性肺炎の副作用により死亡した人数は857人。また、承認直後の2年半に集中しているのが特徴。
この事柄について特に問題視されているのはイレッサは副作用が少ないと宣伝されていたこと。
副作用が少ないと言われていた根拠として
がん細胞にのみEGFRというたんぱく質が付着していて、それを標的にするのでEGFRが付着しない
正常細胞は消滅しないという理論があったこと。
しかし、最近では回復途上の細胞にもEGFRが付着することが分かり、細胞の入れ替わりが活発に行われる肺の細胞に異常が発生し、肺炎になってしまう副作用について説明がついた。
また、添付文書での副作用についての記述が小さかったことからイレッサ訴訟の裁判に敗訴した。
 
イレッサは効く薬だったのか?
まずイレッサの効果は何なのか…先刻された余命より長く生きること
それに対して、イレッサ統計学的に長く生きたデータはない。
 
最後に薬害イレッサ東日本訴訟原告の近澤さんに取材したビデオを観させていただいた。
 
私はそんなに薬を飲む機会も少なく、添付文書も最後まで読む癖はあるんですが、医者のような知識のある人でも危険性を把握できなかったのかと思うと問題が多かったとも考えます。そうすると審査、承認の規制を強くさせるのが妥当だと思いますが、なによりも処方される側も薬に対しての知識をしっかり得ることが大切だといつも思います。これからも薬の内容確認を心掛けていきたいと思います。