春休みの課題  ハンセン病を生きて ―きみたちに伝えたいこと ― 伊波敏男 著 (岩波ジュニア新書) を読んで  (4)

この本を読む前の私といえば「ハンセン病」と聞いて思い浮かぶのは、まず桜井哲夫さん、次に……あれ、なにもわからないかもしれない、などといった具合でした。第1章のほとんどは、また私が生まれる前か、幼い頃に起こった出来事の話でしたから、当然記憶にもなく、読み進めても「ほう、そんなことがあったのか……」と、あまり身近には感じられませんでした。もはや歴史の教科書を読んでいるのと同じような感覚なのです。きっとこれには、私が今までハンセン病への偏見や差別を目の当たりにすることがなかったことも関係しているでしょう。
そもそも、私と同世代の人のうち、ハンセン病に関する史実や今も残る問題についてよく知っているという人は一体どのくらいいるのでしょうか。あまり知っている人がいないのであれば、それらはやがて忘れられていき、また差別の対象を替えて同じようなことが繰り返されるのではないかと思いました。私は、この本を読んで、ハンセン病患者の隔離政策()や差別は、決してなかったことにしてはいけない、今後も伝えられていくべき事柄だと感じました。同じ人間なのに……といった思いが溢れました。だからといって、明日から、いや今すぐにでもそのために何かやろう! とまでは思わないわけです。結局、遠くから見てわかったような気になっているだけなのですね。だから私はいつもこういった話や、惨い事件、戦争などの話に「ひどい話だ! 風化させてはいけないと思った!」といった趣旨の感想を述べることを躊躇ってしまいます。仮にそう思ったのだとしても、思っているだけで、何もしないからです。それって、本当にそう思っているのだろうか? と。ただ、この本を読んで知ったことは忘れないようにしておきたいと思います。
本を読んでいると、伊波さんの私たちへ向けた熱い気持ちが伝わってくるような気がしました。ハンセン病に関することだけでなく、世の中に存在するあらゆる問題について、遠巻きに眺めているだけではいけないのだという思いに駆られました。
療養所を脱出してからの話は印象的でした。バスや職場で受けた差別や、理解してくれる人との出会いの場面は、特に心に響くものがありました。自分と本の中の話との距離がぐっと近づいたような気がし、はっとしました。自分は今まで誰かをそうやって差別してこなかっただろうか、と考えると、いくつか思い当たる節がありました。逆に、自分は誰かの理解者・支えになれただろうか? 伊波さんやT小学校の清水先生のように行動を起こしてきただろうか……?
ハンセン病に苦しまれた方々の時間は返ってきません。すべては人々の無理解・無関心が生み出した悲劇です。歴史は繰り返す、と言いますが、歴史から学び、人々が同じ過ちを繰り返さないようにすることが、これから生きていく私たちにできること、いや私たちがしなければならないことなのだろうと思いました。
今も世の中には、人々の無理解・無関心による悲劇が潜んでいると思います。私たちは、それに気付き、そこに潜む問題が解決されるよう努めるべきです。
 私は今まで、そういった問題を知っても深く入り込もうとせず、遠くから見ているだけでした。しかし、当たり前ですがそれでは何も変わりません。力強く生きている伊波さんの言葉から、改めて行動を起こすことの大切さを考えさせられました。