ラットの解剖 感想 C34

ラットと私が初めて対面したのは6月22日のことだった。ラットはオスとメスの2種類の段ボールに入った状態で届いた。その場でメスかオスどちらを育てるか選択する必要があった。私は何となくメスを選んだ。この選択は私の中ではとても良き選択だったと思う。まず、段ボールから各々のゲージに移す必要があった。周りの受講者がなんの躊躇いもなく、とても可愛がるようにしっぽを掴んで移していく。私はこの日怖くて触ることが出来なかった。この瞬間これから約1ヶ月あまり1人で育てられる自信がなくなったし、周りとの差に自分の育てるラットへの罪悪感も覚えた。どうにかして可愛いと思ってあげたいと「おもちちゃん」という名前をつけた。その日から私は辛うじて1人で世話をしてあげられるようになり、毎日放課後になると欠かさず世話をしに行き、世話が出来ない土日にの間に著しい成長をするその姿に段々愛着さえ湧いてきた。しかし事件は起きてしまった。その名も「おもちちゃん脱走事件」世話をするにはゲージから別のゲージに移す必要があるのだが、その数は限られている。私はそのゲージの順番待ちをしている間四六時中閉じ込められているのは可哀想だと思い蓋を開けてあげるようにしていた。ある日いつもと変わらず蓋を開けてあげた。其の瞬間おもちちゃんは蛙のように飛んで出てしまった。生物実験室の床を走る。近くにいた友人に捕まえてもらい脱走は未遂に防ぐことが出来たがかなり焦った。しかしそこで安堵してはいけなかった。同日、もう一度脱走したのである。この日から蓋を長く開けてあげることはできなくなった。そして次の日から交配が始まった。相性が良かったようでおもちちゃんは何度も求愛を受けているように見えたので子供が宿っているという自信があった。
そして解剖の日。正直私はこの日を楽しみに毎日世話をしていた。とても楽しみで仕方なかった。川合先生の説明を聞いてうずうずしていた。川合先生は出血量がとても少なく、簡単そうに次々と臓器を取り出していく。私も同じように出来る。そんな気がしていたが、一瞬で動脈を切ってしまった。辛うじて臓器は取り出せたが、大量出血という結果に終わってしまった。そして、お待ちかねであろう妊娠の有無なのだが、おもちちゃんはやはり妊娠していた。13匹の胎児が膜に包まれていた。私はその中の1匹の膜を剥がし顕微鏡で観察した。すると、心臓が動いているのが見られた。まさか心臓が動いているのが見られるなんて思ってもいなかったのでとても興奮した。たくさんの命を犠牲にするこの授業はどうなのかと思われるかもしれない。しかし、私含め受講者はこの授業を通して命の大切さはもちろん、臓器の仕組みなど普通なら経験することが出来ない貴重な経験をすることが出来た。私の夢は医療関係ではないもののこの経験をいつか役立たせられる日が来たらいいと考えている。