活動報告(令和2年度5月28日)

今回も前回と同じ『生命操作』についての資料を用いて議論を行った。

前回の活動では、一つ目のテーマについて全体で考えた後、グループに分かれて二つ目のテーマを考えたのだが、今回は最初から2つのグループに分かれて議論をすることになった。

 

議論するテーマは、前回扱わなかった残り4つのテーマの内からそれぞれのグループで話し合いたいテーマを2つ選ぶという形になった。

私のグループでは ・胚への遺伝子治療 ・デザイナー・ベビー の2つで議論をすることとなった。

 

○胚への遺伝子治療

まず想定の部分を読み、k夫妻に賛成か反対かで意見を聞くことにした。

 

賛成の人の意見

  • 重い病気として生まれてきてしまったら、寿命が短くなる可能性が高いし、自由に動けないと思う。なので幸せになるためには健康で生まれてきた方が良いと思う。
  • 生まれてくる側として考えてみると、健康で生まれてくることが出来るのだから良いのではないか。
  • 成長してから治療するのと、生まれる前から治療するのは同じなのではないか。

 

賛成とも反対とも言えないという人の意見

  • 遺伝子操作をすることによる悪影響はないのか。
  • 確かに理解は出来るが、乳がん患者への治療も発達してきているのにも関わらず、遺伝子操作による治療が発達してしまうと、今の手術や薬などの面での医療の発展が出来なくなってしまうのではないか。

 

反対の人の意見

  • 今の医療も進歩しているので、遺伝子治療で治してしまうのは今の医療の発展がなくなってしまうような気がするので違うような気がする。
  • 障がいというのは一生続くものだけれども、がんというのはいつ発症するかも分からないし、自分が保因者だからといって自分の子供が必ずしもがんになるわけではない。それにも関わらず、遺伝子治療をする必要性はあるのか。

 

ここで胚への遺伝子治療とデザイナー・ベビーの違いは何かという論点で話し合うことになった。話し合った内容を簡単にまとめてみた。

◦この2つの違いは何だと思うか。

→胚への遺伝子治療というのは、あくまでも治療なので悪い部分を治すといったものだが、デザイナー・ベビーというのはどこも悪くはないがさらに良いものにするために胚を操作することだと思う。

 

◦ではこの2つについて、どちらかには賛成だがもう一方には反対の意見を持っているという人はいるか。

→・病気を治すことに関しては良いと思うので、遺伝子治療については賛成だが、デザイナー・ベビーというのは何も悪いところがないのに胚を操作し、さらにそれをまるで商品かのように扱っているところが良くないと思う。

 ・胚への遺伝子治療については賛成であるが、デザイナー・ベビーに関しては、悪い人は悪用するのではないかと思うのであまり進んで取り組むべきではないと思う。しかし、自分だったら自分の子供に自分と同じ悩みを抱えて欲しくないのでデザイナー・ベビーを作ってみたいと思う。

 

◦2つともお金のかかることだと思う。つまりお金がある人しか出来ないため、お金のある人達から生まれてきた子供ばかりが健康であったり記憶力が良くなったりして、格差が生まれるのではないか。

→・スマートフォンがはじめはあまり普及していなかったのに、今ではほとんどの人が持っているのと同じように、最初は格差があったとしてもそれは年月が解決するのではないか。

 ・能力の差というのは将来の就職などにも大きく関わると思うので、結果的に貧困の差に繋がると思う。

 ・そもそもこのような科学技術の進んだ話は発展国だからこそ出来るのであって、発展途上国では考えることすら出来ないのではないか。なのでこの2つを受け入れて、積極的に進められる国とそうでない国に分かれてしまい、世界的に見ても格差が生まれてしまうと思う。

 

話は胚への遺伝子治療に関することに戻り、大人になってがんを発症してから治療するのと、胚の段階で除去するのでは何か違いがあるかという話題になった。いくつかの意見を抜粋してみた。

  • 大人になってからだとその受けた手術によって後遺症が残ってしまったりする可能性もあると思うので、胚の時点で確実になくしておくのが安心だと思う。
  • 胚の段階での治療はまだ確実ではなく、問題が多いと思うが、大人になってからの治療に関しては、現在はとても発展しているという違いがあると思う。
  • 胚の段階ではまだ本人に意思がないのに、親ががんになって欲しくないという一心で勝手に治療するということであるため良くないが、大人になってからだと治療をするかしないかや治療の方法などに対する本人の意思が少なからず反映されるので、本人の意思があるかないかという大きな違いがあると思う。

 

ここで話を聞いていた先生からのコメントがあり、それに対する意見も出たので、私なりにまとめて書いてみた。

◦確かに胚の時点では本人の意思でなく親が治療することになると思うが、乳幼児などのまだ自分の意見を主張することの出来ない人に対して親が治療をすることを決めることに関しては、どう考えるか。

→・生まれてきた以上、その子は一人の人間として扱われるべきなので、胚の段階で親が治療をすると決めることと、小さい子供に対する治療を親が決めることは違うと思う。

 ・胚の時点ではその子に何の痛みも苦しみもなく、記憶にも残っていないわけだが、乳幼児というのは確かに自分の意思を伝えることは出来なくても、治療で体に傷が残ったり痛みと闘ったりするのはその子自身である。その分、親には治療をすると決めた責任が伴うと思う。これらは胚の段階での治療ではないことである。また、自分の意思が主張できない人に対する治療の判断に関しては、乳幼児だけでなく大人でも十分にある話だと思う。本人に同意能力がない場合はその家族が同意をして治療をさせるといった話はよくあることだと思う。それとこの乳幼児の治療に対する親の判断と責任は等しいものだと思う。

 

◦大人になってからの治療と胚の段階での治療には決定的な違いがある。それは、遺伝子をいじるということは、その子供だけに影響があるのではなく後世にも影響が及ぶ可能性があるということだ。それも踏まえてどう考えるか。

→賛成の人の意見

 ・確かに全面的にこの制度を進めていくのはあまりよくない気はするが、どんな薬に関してもやはり動物での研究から人体での実験を重ねて、使えるようになっているのだから、どこかで踏み切る必要があると思う。今のままだと発展しないから未知のままになる。

 反対の人の意見

 ・やっぱり未知なことなので、安全性のないことはしなくても良いのではないか。

 ・自分だけでなく、後世にも影響が及ぶこともあるということは、もはや個人の問題ではなくなってしまうので、良くないと思う。

 

○デザイナー・ベビー

想定の文章を読み、賛成か反対かの意見を聞いたところ、6人の内1人が賛成で5人が反対ということだった。

 

 賛成の人の意見

  • 確かに商品化したりして悪用されるのは良くないことだと思うが、自分のコンプレックスを子供にも持って欲しくないので自分なら作ってみたいと思う。

 

 反対の人の意見

  • 自分にとってはコンプレックスであっても、必ずしも自分の子供がそれをコンプレックスと思うかどうかは分からない。なのでそれは子供に自分のようになって欲しくないという気持ちだけで遺伝子を操作する親の自己満足に過ぎないのではないか。
  • 自分をどう捉えるかは人それぞれであって、子供がどう感じるかや考えるかは誰も分からない。
  • 子供は親の所有物ではないのに、わざわざリスクの伴うことをしてまでやるのは親の欲望にすぎないと思う。

 

◦もし自分に子供が出来たとしても、しないという選択肢を選ぶか。

→・子供が何に興味を持って知識を広げていくかは子供次第なので、親が生まれる前から決めてしまうのは良くないと思うので、しないと思う。

 ・自分がデザインした子供だと自分よりも優れた子が出来ると思うが、親というのは子供のお手本になったりする存在であるべきなのに、子供の心が読めないと、教育をすることが出来なくなってしまう気がするので、しないと思う。

 ・自分が逆にデザイナー・ベビーだったとしたら、嬉しくない。

 ・子供がどういう個性を持っているかを発見して広げさせてあげるのが親だと思う。

 

ここで先生からの質問があり、それに対する考えが出たのでいくつかの意見を抜粋してみた。

◦生まれてきてからの人生設計はその子自身がすれば良いが、胎児教育や子供が小さい頃に通わせる習い事などは、親が決めてしていることであって、デザイナー・ベビーと同じなのではないか。

→・そろばんや書道などが一例だが、それらは子供が生きていく上で少しでも役に立ったり、将来にプラスになったりするためにしていることなので、親の勝手な判断で子供の特徴が決まってしまう遺伝子操作とは違うと思う。

 ・確かに子供の意思でなく、親が勝手にしたりさせたりしていることだが、それは少しでもプラスになったり、子供の将来の選択肢の1つにでもなれば良いなという気持ちや、子供の才能を見つけてあげたいなという気持ちからすることだと思うので、子供の特徴や才能をこうだと親が生まれる前から決めつけてしまう遺伝子操作とは全く違うことだと思う。

 

◦自分が母親で父親の遺伝子を アスリート選手の遺伝子、ノーベル賞受賞者の遺伝子、普通のおじさんの遺伝子 の中から選べるとしたら、どれを選ぶか。

→・アスリート選手の子だったり、ノーベル賞受賞者の子だったりしたら、親である自分が子供に期待をしすぎてしまう気がするので、普通の人を選びたい。

 ・アスリート選手の子だったらスポーツの才能を、ノーベル賞受賞者の子だったら勉強面での才能を期待したり求めすぎたりして、他に秘めているかもしれない才能を見つけられなくなってしまうのではないか。

 ・アスリート選手である父親からその才能を持った子供が生まれたとき、自分には分からないことがたくさんあってついていけなくなってしまいそうだし、ノーベル賞受賞者の場合も同じことが起こりかねないので、価値観が同じくらいの人を選ぶべきだと思う。

 

ここで時間が来てしまったので、議論を終えることとなった。もう1つのグループの議論がどのような感じだったのかを今回の活動時間では知ることが出来なかったので、コメントで教えていただけたら嬉しいです。

 

自分は考えたこともなかったような意見や考えをたくさん聞くことが出来たので、参考になったし、とても興味深かった。1つのテーマから賛成か反対かで分かれ議論し、そこから新たな疑問や質問が出ることによって、1つのテーマが広がっていき、色々なことを考え議論することで、新たな気づきや考えが生まれ、より深くなっていくのが議論の面白いところだなと感じた。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。                                B26