活動報告(令和2年度7月2日)堀先生の講義(2)

 前回に引き続き、たった今のコロナ流行下における医療現場が抱える問題について、堀先生のお話とともに理解を深めた。

 医療現場ではトリアージが大きな課題であり、例えば、交通事故による大量の負傷者をどの病院にどういう優先度で搬送するかなどだが、今日のコロナ流行下でも然りだ。集中治療室にて、3人の患者がいて、呼吸器が2つしかないという条件のとき、我々は患者の様態などから優先順位を判断するべきだ。優先度に関与する観点はいくつかあり、また相反する意見や思考が必ずそこにそれぞれ並立して存在している。くじ引きや先着順を合としても、個人の様態を鑑みるべきだという反が存在する。個人の様態や年齢を視野に入れた優先順位の決め方を合としても、それに対する反は少なからず存在する。そして、トリアージのルールは皆が納得するものでないといけないのが大前提ではあるが、合と反を止揚できる手立てがない条件に対して、決まりを定めるのはこの上なく困難だと考えられる。かと言って、医療従事者のその場の判断に委ねるのは、彼らの精神的負担が大きすぎる。

 トリアージの課題の大きさを少し解消する方法として、大阪大学人間科学研究所未来共創センターの石蔵文信氏が提案した「譲カード」が紹介された。〈新型コロナウイルス感染症で人工呼吸器や人工肺などの高度治療を受けている時に危機が不足した場合には、私は若い人に高度治療を譲ります〉譲カードに記載された文である。利点として、医療現場の負担軽減があげられ、尊厳死安楽死と違い、他人の死が関わる状況だからこそ譲カードには意味があるとのこと。医療崩壊が起きて命を譲るかの選択を患者が考えることは、トリアージの解決において新しい手段なのかもしれない。しかし、この譲カードだけでなく、加えて尊厳死安楽死という行為は、医療・命の救助が義務の目的の病院で死を求めることであり、医療規定らも含めて再び賛否両論を起こす議論になるだろう。

 結局、我々はトリアージを回避する手段を見つけ続けないといけないのだが、これはトリアージのルールを定めるのと同じくらい困難である。そんな中、ある生徒から出た意見を紹介したい。「トリアージを迫られたとき、過剰量に当たる患者を冷凍保存して、順番に治療していく」。突飛だが画期的で、とても感心した。患者のいかなる様態をも一時的に停止させるような技術が開発されれば、医療現場におけるトリアージは解消へと大きく前進するだろう。

 トリアージの解決は困難である。僕が状況に置かれた場合、自分が考える合に対して、反が存在することをしっかりと認識し、それらを止揚する術がないなら、僕は自分が合と考える優先順位で行動するべきだと考える。そしてその行動に自信を持つべきである。

文責(C30)