救急車の有料化について C組 23番
1.はじめに
“救急車の有料化”について取り上げられているニュースを見た。
日本では無料であることが当たり前になりつつある救急車であるが、救急車が救急搬送の受け入れを拒否できないことを利用した不要な119が増え、有料化への検討が進められている。救急車一回あたりのコストは4万円以上と言われており決して安くはない。
そこで今回、私なりに考えた“救急車の有料化”に対するメリット/デメリットをあげ、自分の意見を見出すため調べてみようと思う。
2.救急車出動件数の現状 (資料1) 省略
〈http://www.soumu.go.jp/shoubou/ (総務省HPより)〉
図より、平成7年から年々救急車の出動件数が増加しているのがわかる。また、図にはないが去年(平成26年)には過去最多の598万件を超えたそうだ。
ここからわかるように、約20年で救急車の出動件数は82%も増加しているが、実際に搬送される人の約半分が軽症者であるという。それにより、本当に救急搬送が必要な人への対応が遅れる・救急隊数の数が追いつかない、などの問題があげられている。また、財務省は、不要不急な出動を減らすことで年間約2兆円もの消防に関わるコストを少しでも削減する狙いだ。
3.考えるにあたって
3-1.“軽症者”とは
先程も紹介したとおり、救急車の出動件数の約半分を占める“軽症者”とは一体どのような人か。病院での軽症者とは、即日帰れる人、つまり入院が不要な人を指すそうだ。
しかしその中でも明らかに救急でない次のような場合もある。
・交通費がないから無料の救急車を呼んだ ・病院での待ち時間がいやだ
・診察時間外だから救急患者として診てもらった
以上を踏まえたうえで救急車を有料化した際の、メリット/デメリットについて考える。
3-2.メリット
・救急車の不要な利用が減る ・救急患者への迅速な対応ができる
・出動回数が減ることでコスト削減につながる ・救急隊不足の解消
3-3.デメリット
・重症でも救急車の要請を躊躇する ・金銭的に呼べない人の救命率の低下
・有料=商売と考えることからのサービス要求 ・金額の設定基準
4.私の考え
私の意見は、率直に言うと有料化に賛成だ。
実際に欧米の大半の国では救急車は有料であり、以下の通り決して安くはない料金となっている。
【諸外国の救急車の料金体系】 (資料2)
・ニューヨーク(アメリカ)――50,000円
・バンクーバー(カナダ)――60,000円
・ロンドン(イギリス)――0円
・ミュンヘン(ドイツ)――67,000円
・ローマ(イタリア)――0円
・ゴールドコースト(オーストラリア)――90,000円
・パリ(フランス)――重症者は0円、それ以外は34,000円
・シンガポール――非救急の場合のみ有料
しかし、すべての場合において有料にするのではなく、パリやシンガポールの例のように重症者のみ無料という制度が妥当であると思う。前提として救急車は有料であり、医師の判断によって返金される場合もある、というようにすれば有料化にした際の救命率の低下を少しは防げるのではないだろうか。また、救急車を要請した際に保険が適用されるとさらに改善されるだろう。こうすることで救急車を営利目的だと判断する人も減り、サービス要求を少しは免れると考えられる。
次に救急車を要請した際の金額設定について考えてみる。
先程の【諸外国の救急車の料金体系】の資料を見ると有料の国々では平均6万円とかなり高い金額を要求しているように思える。しかし日本での救急車1回あたりのコスト(報償費、役務費、備品購入費を含む)が4万円以上であることを考えると妥当なのかもしれない。
だが、ここでひとつ注意してもらいたい点がある。
財務省はなにも、“救急車を営利目的にしようとはしていない”という点だ。海外の場合、国によっては救急車が民営化されており、利用する距離や時間に応じて金額が変わるケースもあるそうだ。また、営利目的でなくても、資料を見る限りでは、1回の出動にかかるコストを利用者が負担するような金額設定になっている。つまり税金で救急車のコストをまかなっていない、ということだ。
しかし日本の場合、財務省のいうコスト削減はあくまでも不要な119をなくすことであり、救急車のコストを税金でまかなわない、ということではない。これはつまり、100円でも500円でも、救急車を利用するのに料金が発生すれば、不要な119は減らせる可能性があり、それがコスト削減につながることを期待しているのだ。
わたしには不要な119をする人の気持ちがわからないので、金額設定をいくらにすれば効果があるのかはっきりわからない。しかし、タクシー代などと比較して1000円から3000円ほどの金額が妥当ではないかと思う。また、この金額であれば、実際に救急の際でも躊躇することなく119をコールすることができるのではないだろうか。
先程も記した通り、そもそもの前提として『医師の判断に救急車の費用が返済される場合もある』としておけば、重傷を負った場合や重傷者が近くにいた場合に119にコールすることを躊躇しなくなるだろう。
数年前、道で自転車に乗ったおばあさんが私と父の横で急に倒れたことがあった。その際、私たちを含め周囲にいた人は救急車を呼ぼうとしたが、そのおばあさんはかたくなに断り続けた。結局、近くに交番があったのでお巡りさんの判断から救急車を呼び、おばあさんは運ばれて行ったが、もし有料化すればこの場合どうすることが最善であるのだろうか。もし医師の判断によって費用がかかってしまったら?もしおばあさんが貧しい人であったら?もし近くに交番がなかったら?
あとから振り返っただけでもたくさんの疑問がわき、実際そのような状況に陥れば考えているあいだにも救命率が下がってしまうかもしれない。やはり救急車の有料化は救命率を下げてしまうのだろうか。
そこで、ぜひ参考にしてもらいたいものがある。それは消防庁が発表している『救急車の呼び方』についてのサイト(資料3)だ。
ここには救急車を呼ぶ際の基準が詳しく書かれている。
しかしそんなものを確認している場合ではない、という場合は記載されている通り、♯7119で救急の相談窓口があるのでそれもひとつの手であると思う。
♯7119もコールする場合ではない、という際はそれはもう救急であると思うので躊躇することなくぜひとも119を利用していただきたいと私は思う。
5.結論
私は救急車の有料化に賛成である。しかしその前提として以下のようなものを定めたい。
・医師の判断によって重傷者には返金制度があること
・救急車を営利目的化しないこと
・負担になりすぎない金額設定をもうけること
・#7119の存在を国民が認知していること
以上の4つを前提としたうえで救急車を有料化すれば、有料化の際のデメリットを免れることができ、また、不要な119を減らせることにより救命率の上昇やコスト削減を期待できるのではないだろうか。
6.参考文献
(資料1)総務省 URL: http://www.soumu.go.jp/shoubou/
(資料2)看護roo URL:http://www.kango-roo.com/sn/a/view/1343
(資料3)消防庁 救急車の呼び方 URL:http://www.fdma.go.jp/html/life/kyuukyuusya_manual/pdf/2011/japanese.pdf